'eL-tneO 表紙図書館小説 ⇒ 『テディベアのクリス』


『テディベアのクリス』


あまり上等ではない布地に
左右で長さの違う手
目のボタンは種類違いの色違い
テディベアのクリスはとても不格好なぬいぐるみでした

きっと誰も買ってくれないと
クリスはガレージセールの端っこで
小さくなっていました

ある日小さな女の子がクリスを抱き上げ、言いました
「このぬいぐるみ、ください」

女の子はうちに帰るなりクリスを壁にぶつけました

クリスを踏みにじり
たたきつけ
かみつきました

そしてクリスを放りだし、
一人で泣き始めました
お父さんとお母さんが離婚してしまったからです

それから毎日クリスは
女の子にぶつけられ
踏みにじられ
たたきつけられ
かみつかれました

不格好なクリスは
前にもましてぼろぼろになってしまいました
でもクリスは思いました
「どんなに痛くても
 この子が楽になれるなら
 ボクは我慢できるよ」

ある日女の子はいつものように
クリスを壁にたたきつけました
その時クリスの片方の目が取れて落ちてしまいました
女の子ははっとしてクリスを抱き上げ
言いました
「ごめんなさい……」
それからしばらくして
女の子は笑顔を見せる事が出来るようになりました

やがて女の子のところに新しいお父さんがやってきました
新しいお父さんはとてもやさしいお父さんでした
新しいお父さんは女の子のために
クリスマスプレゼントの大きなぬいぐるみを買ってきました
ふかふかの布地とやわらかな綿で出来た
立派な大きなテディベアでした

もう新しいぬいぐるみがあるので
お父さんは古くて汚いクリスを捨ててしまいました

冬の寒いゴミ置き場で、クリスは寒さに震えていました
しかし、クリスは思いました
「あの子が幸せになれたから、これでよかったんだ」

すると、ゴミ置き場にカラスがとんできて、
クリスを見つけて言いました
「こんなところに綿がある
 この綿を持って帰れば
 私の子供達も寒い思いをしないですむわ」

カラスはクリスを引き裂き、
クリスの中の綿をすべて引き千切り
持っていってしまいました
クリスはすっかりぼろきれのようになってしまいました
痛くて寒くて苦しいけれども
それでもクリスは思いました
「きっとこれでカラスの子供達は
 凍えずにすむんだ」

やがて雪が降り始めました
ゴミ捨て場も
クリスマスの町並みも
全てが灰色に塗りつぶされる頃
ぼろきれになったクリスは小さな、弱々しい声を聞きました
     みぃ…、         みぃ…
見ると小さなダンボールの中で
一匹の子猫が今にも凍えそうな様子で
鳴いているのでした

ぼろきれのクリスはその箱に覆い被さり
言いました
「死んじゃだめだよ、死んじゃだめだよ」
そして最期の力を振り絞って
子猫をその体で包み込みました



真っ白にそまった雪の町に朝日が差し込み
きらきら輝くクリスマスの朝がやってきました
一人の男の子が雪で遊ぼうとおもてに出てきて
そして子猫のダンボールを見つけました
男の子は急いで箱を抱え、家にもって帰りました

男の子のお母さんは弱りきった子猫に
ミルクを与え
暖かなお湯につからせて、
そして箱の中にあったぼろきれで
きれいにふいてあげました
そしてぼろきれをゴミ箱に捨てて
男の子に聞きました
「この子の名前は何にする?」
男の子はうれしそうに言いました

「クリス!クリスマスに拾ったから」



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